ボーダフォン社、欧州初の商用Open RANのデプロイメントに
Wind River Studioを採用

Jun 14, 2021 通信

By Kevin Dallas, Wind River President & CEO

ウインドリバーは、ボーダフォン社が構築する、完成すれば世界最大規模と称される欧州初の商用Open RANネットワーク基盤のパートナーとして選定されました。このことを大変うれしく、また光栄に感じております。ボーダフォン社は、この取り組みが他の大規模Open RAN構築を加速させ、欧州各地における新たなデジタルトランスフォーメーションを牽引すると考えています。Wind River Studioは本プロジェクトにおいて、クラウドネイティブな分散型プラットフォームを提供するクラウドインフラストラクチャのテクノロジーとして機能し、ボーダフォン社の目指す次世代Open RANの基盤となるさまざまなOpen RANアプリケーションをホストします。

ボーダフォン社は、欧州・アフリカなどで事業を展開する欧州最大手の総合通信事業者です。同社は「connect for a better future」というビジョンのもと、その専門的知識や技術、企業規模を独自の方法で活かして、社会にポジティブな変化をもたらし続けています。2021331日現在の加入者数は、携帯電話サービスは3億人以上、固定ブロードバンドサービスは2800万人以上、TVサービスは2200万人以上で、接続しているIoTデバイスは12300万台以上です。

 

分散型RAN5G成功の鍵に

拡張現実(AR)や仮想現実(VR)、没入型体験などの新しい5Gサービスの分野でビジネスチャンスをつかむには、通信事業者はスケーラビリティ、低レイテンシ、高パフォーマンス、大容量を実現するだけでなく、新しい運用モデルを確立する必要があります。このため、「顧客に物理的に近い場所でデータを処理し、超低レイテンシを実現する」RANに投資することが重要となってきます。5Gサービスの展開には不可欠といって良いでしょう。

ここで重要なのは、機能性の高いOpen RANアーキテクチャを構築することです。柔軟性、アジリティ、ロールアウト速度を高めるだけでなく、商用オフザシェルフ(COTS)ハードウェアや最新のコンテナ型オープンソリューションが使用可能、などコスト削減も意識した設計である必要があります。Open RANは、オープンインタフェースや製品の相互運用性のベースとなる、Telecom Infra ProjectTIP)やO-RAN Allianceなどの業界イニシアチブが推進する概念です。

ボーダフォン社はOpen RANをリードする大手通信事業者の一社であり、Open RANに対する今回の取り組みも業界最大規模となっています。現在ボーダフォンUK社では、Open RANの利用という同社の重要なコミットメントを旗印にOpen RANの展開を計画しており、自社のレガシー機器の大部分を入れ替えるとともに、新しい技術の導入や新規ベンダーの参入を促してサプライチェーンの多様化を図る予定です。

ウインドリバーは、分散型クラウドインフラの実運用で唯一実績を有するサプライヤであり、このことがボーダフォン社に採用いただく決め手となりました。米国市場におけるWind River Studioテクノロジーの大規模展開や世界初のエンドツーエンド5Gデータセッションの仮想化など、Verizon社と共に培った経験が買われたのです。ウインドリバーはボーダフォン社の将来的なネットワークデプロイに向け、パートナー企業のエコシステムと共に、商業化に先立つブループリントの検証および定義に従事してまいります。

 

ボーダフォン社とウインドリバーによるOpen RAN検証

ボーダフォン社は現在、Open RANに対するブループリントの検証をしており、2021年内のデプロイ開始を目指しています。これは、完全にコンテナ化されたシングルRAN3G4G5G)の基地局で、リアルタイムのベースバンド処理をネットワークのファーエッジ、無線機の近くにあるクラウドに配置するものです。ネットワークエッジでのリアルタイム処理は、極端な低遅延の要求にも対応できるだけでなく、需要の変化に合わせて拡張することができます。ボーダフォン社の目標は、Open RANを活用することでコスト効率良く3G4G+を拡張し、5Gに必要なカバレッジと容量を確保することです。これにより柔軟性、革新性、コスト効率を高め、さらに今まで取引のなかったサプライヤに門戸を開くことにより、モバイルネットワークのサポート体制の強化を目指しています。

ボーダフォン社のOpen RANソリューションは、分散型RANDRAN)で、リモート局(DU)と集約基地局(CU)を併設して無線サイトに配置する構成となっています。これによりスケーラビリティ、低遅延、高性能、大容量を実現します。このコンテナ型DRANソリューションは、Wind River Studio上でのテストに成功しています。

ボーダフォン社のOpen RAN・無線ネットワークグループ長、フランシスコ(パコ)マーティン氏は、次のように述べています。「欧州初のOpen RAN商用化という重要な局面で、ウインドリバーと協業できることを大変喜ばしく思っております。この新しいソリューションの導入により、ウインドリバーをはじめとする新規サプライヤに門戸を開くことが可能となり、モバイルネットワーク拡張における柔軟性を強化することができます。ボーダフォン社はOpen RAN開発におけるパイオニアであることに誇りを持ち、この生まれたてのソリューションのパフォーマンスを見守ってまいります。」

Wind River Studioは、高いセキュリティや安全性、信頼性が求められるミッションクリティカルなインテリジェントシステムの開発、デプロイ、運用、サービス提供を実現する業界初のクラウドネイティブプラットフォームです。Studioは、一元管理された運用インターフェイスを介してライフサイクル全体にわたってデジタルスケールを提供し、変革的なビジネス成果を促進するように設計されています。

 Wind River Studio は、オープンソースの分散クラウドであるStarlingXをベースとする商用グレードのKubernetesクラウドプラットフォームです。非常に小さなフットプリントでエッジクラウドインフラを管理できるよう設計されています。クラス最高のオープンソース・テクノロジーを組み合わせて分散ネットワークのデプロイと管理を行います。

Wind River Studioは、クラウドRANなどの分散クラウドシステムがデプロイされると、機械学習アルゴリズムを使ってデータ処理し、意思決定に役立つ有意義なインサイトを生成することでシステムの効率的な管理をサポートします。クラウドインフラストラクチャ内のクラスタやサービスのフルスタック監視の一環として、Studioはクラウドの稼働データを収集、分析、可視化します。これにより運用コストを抑えながらクラウドの稼働維持と最適化を実現することができます。

ウインドリバーは、ボーダフォン社との緊密な協業により、革新的なOpen RANを推進し、通信環境のオープン化やエコシステムの多様化を促進できることを楽しみにしています。

Wind River Studioの詳細については、こちらをご覧ください。

https://www.windriver.com/japan/studio