私は現在、ウォータールー大学のCo-op先として、ウインドリバーのソリューションマーケティングインターンとして働いています。ウインドリバーでは、Wind River StudioとVxWorksに携わってきました。ウォータールー大学はウインドリバーと深い関係があり、他の学生からウインドリバーで働いたCo-opの経験について話を聞くことがありました。全員が素晴らしい経験をしたと言っていたので、私の最初のCo-op先として最適な選択だと思いました。組込みソフトウェア企業で働くというのは、目からウロコの体験でした。ソフトウェア、マーケティング、ビジネスについて多くを学び、この経験からウォータールーではコンピューティングの副専攻を目指すことになりました。同じようなインターンシップ先を探している人にもこの経験を勧め、将来的にはどこかのタイミングでウインドリバーで働けらたいいなと思っています。
このブログでは、私のウインドリバーでの体験の一部であります、Wind River StudioとWorkbenchの両方でVxWorksイメージをビルドする際の違いについてご紹介したいと思います。まず、両方の環境でVxWorksソースビルド(VSB)とVxWorksイメージプロジェクト(VIP)を構築しました。VxWorksユーザの多くは、現在もWind River WorkbenchをIDEとして使用してオペレーティングシステムを構築していますが、今回はWorkbenchベースのビルドプロセスとクラウドベースのWind River Studioビルドプロセスの違いを検証しました。
WorkbenchでVxWorksをビルドする
はじめに、VxWorksに付属するEclipseベースのWind River Workbenchを使用して、VxWorksイメージビルドの構築を開始しました。当初、WorkbenchのUIは多くの設定オプションがあり強力に感じましたが、私のような新規ユーザにとっては少し難しく、複雑でもありました。私は、製品のドキュメントとチュートリアルを使って、VxWorksビルドを設定し、自分好みの設定をすることができました。通常のユーザはVxWorksイメージを構築するための環境をすぐに使いこなすことができますが、Workbenchを使うのは今回が初めであり、大学生という限られた経験しかない私にとって、Workbenchを理解し、Eclipseベースのワークフローをナビゲートするのには、努力が必要でした。
WorkbenchでのVSBプロジェクトの作成
Workbenchはローカルコンピュータのリソースに完全に依存しながらVxWorksイメージを構築するため、イメージの構築時間は開発マシンのコンポーネントの速度に左右されます。私の場合、RTOS開発者が使用しないであろう平均的な性能(8GB DDR4、ミッドティアi5、専用GPUなし)のWindowsラップトップを使用し、VSBの構築に1時間弱、VxWorksイメージの構築に1分弱かかりました。平均的なマシンでのこのビルドタイムは理想的ではなく、開発者は、迅速なビルドタイムを望むなら、優れたハードウェアを備えたハイエンドのワークステーションを利用することになるでしょう。
Workbenchでのイメージプロジェクトの設定
Workbench自体には、UIに組み込まれたガイダンスがほとんどなく、VxWorksイメージを構築するための環境の使い方を理解するためには、ウインドリバーのウェブサイトにあるチュートリアルを確認する必要がありました。ウインドリバーは、新規ユーザを支援するサポートを提供しています。Workbenchユーザは、VxWorksビルドを作成する際に使用するツールや設定を選択できるため、特定のプロジェクトの要件を満たすためにRTOS設定を最大限に制御することができます。
Wind River StudioでのVxWorksの構築
次に、Wind River Studioを使用してクラウド上にフルVxWorksイメージを作成しました。VxWorksのビルドプロセスは、Workbenchと同様、VSBからのビルドに始まり、そのVSBをベースにVxWorksイメージプロジェクトを構築しました。
作成したVSBから構築するイメージの設定
VSB と VxWorks イメージのビルドは簡単で、Wind River Studio の UI がビルド環境設定の編集とビルドの設定プロセスをガイドしてくれました。Wind River StudioでのVxWorks構築は、すべてのステップでガイドされ、新規ユーザである私でも、クラウドのパワーとリソースを使用してビルドをコンパイルする前に、好みのRTOSを迅速に構成することができました。クラウド上でビルドが完了するまでの時間は、VSBで3分弱、イメージで1分弱と、迅速でした。つまり、外出先のノートパソコンやオフィスのワークステーションなど、どのようなマシンでビルドを行おうとしても、クラウド上では常に高速なビルド時間を得ることができ、利用できるハードウェアに制限されることはないのです。
VIP Configのスクリーンショット
VxWorksのビルドプロセスは簡単に理解することができ、ビルドを完了するために製品ドキュメントに頼る必要がないほど直感的な環境になっています。また、Wind River Studioでは、VxWorksのビルドに関するチュートリアルやデモも豊富に用意されており、Wind River StudioでのVxWorksビルドプロセスのガイド付きデモをステップごとに体験できるインタラクティブな「Wind River Studio バーチャルツアー」もあります。パワーユーザ向けに、Wind River StudioはDevSecOpsフレームワークによる自動化機能も提供しています。Wind River Studio Pipeline Managerを使用してビルドプロセスを既存のツールと統合し、新しく作成したVxWorksイメージをコード解析、テスト、デプロイ、運用などの進行中のプロジェクトに活用することが可能です。
まとめ
VxWorksイメージを構築する2つのオプションを比較したとき、Workbenchと比較してWind River StudioでVxWorksイメージを構築することの付加価値について、主に3つの要点があると実感しました。
・ Wind River Studioでのクラウドベースのビルドプロセスの速さ
- Wind River Studioでは、クラウドのリソースを使って構築するため、構築スピードは使用しているPCのパフォーマンスに左右されません。
- これは、ハイエンドのワークステーションにアクセスできない開発者にとっては、特に便利な機能です。
・ ユーザインターフェースとWind River Studioのシンプルな環境
- Wind River Studioは、親しみやすくモダンなウェブベースのUIを備えており、私のような新規ユーザにとって理想的です。
- インターフェースは理解しやすく、最初のVxWorksイメージやその他の関連プロジェクトを構築するプロセスを簡素化することができました。
- Workbenchのインターフェースと全体的な体験は、包括的で強力ではあるものの、新規ユーザとしては少々とっつきにくいものでしたが、Wind River StudioではVxWorksイメージの構築は非常に親しみやすいものでした。
- 経験豊富なユーザは、Workbenchの多機能性とコンフィギュアビリティ、およびローカルリソースを使用して環境を自己管理する機能(例えば、安全なラボ)を好むかもしれません。
- Wind River StudioでのVxWorksビルドは、各ステップでのガイドや事前設定により、シームレスに感じられます。一方、Workbenchでは、新規ユーザにとって、VxWorksビルドプロセスの設定と開始方法を把握するのはより複雑な作業となります。
・ Wind River Studioが提供するガイダンスやデモ
- ウインドリバーの最新の開発環境であるWind River Studioは、常に新しいデモやチュートリアルをリリースしています。
- 「Wind River Studio バーチャルツアー」では、VxWorksのWind River Studioベースのビルドプロセスをインタラクティブに体験でるので、実際にビルドする際に何をすればよいかがよくわかります。
- Workbenchで豊富な経験を積んだユーザは、すでに慣れ親しんだ環境を好むかもしれませんが、Wind River StudioはVxWorksのビルドと設定を成功させるために、驚くほど簡単に学習し習得できる環境です。
備考
私は、確立されたソフトウェアソリューションを実際に体験することで、ソフトウェア開発環境とプロセスが身近に感じられるようになりました。インターンシップでの経験を通して、私はクラウドリソースの活用と、それがいかに簡素化、合理化、協調的な新しいソフトウェア開発パラダイムを可能にするかを理解することができました。クラウドリソースを使った開発の威力を目の当たりにし、これからはクラウドで開発することがソフトウェア開発の主流になると確信しました。