Jul 28, 2024 Linux

eLxr 誕生

Edge-to-Cloudデプロイメント向けにエンタープライズグレードLinuxディストリビューションを提供


著者: Mark Asselstineマーク・アッセルスタイン

本日、eLxr Projectは、Debianのもつインテリジェントエッジ機能を継承する、Debianから派生した「eLxr」の初回リリースを公開しました。今後eLxrは、エッジからクラウドまでシームレスにご利用いただけるよう機能拡張していく計画です。eLxrは、ニアエッジのネットワークとワークロードに特有の課題に対応するエンタープライズグレードのオープンソースLinuxディストリビューションです。

eLxr Projectとは?

eLxr Projectは、エッジからクラウドまでをカバーする、信頼性の高い、革新的なソリューションを求める技術者や企業ユーザが最新テクノロジーにアクセスできるようにすることを目的とした、コミュニティ主導のプロジェクトです。本プロジェクトは、ユーザが簡単に導入でき、オープンソースの理念を完全に尊重した『eLxr』 と呼ばれる、エンタープライズグレードのオープンソース Debian 派生ディストリビューションを作成および管理します。

eLxr Projectの基本的理念は、オープンソースソフトウェアのアクセシビリティ、イノベーション、および完全性の維持です。エンタープライズ グレードの Debian 派生ディストリビューションでこれらの進歩を実現し、ユーザーが無料でLinux ディストリビューションを利用できるメリットを享受できるようにします。

eLxrはオープンソースの原則とともに導入のしやすさを重視することで、コラボレーションと透明性、新技術の普及を促進する、イノベーションとコミュニティ主導の開発の両方を重視する、幅広いユーザーとコントリビューターが利用できることを目指しています。

eLxr Projectは、Debianエコシステムの上に構築すると同時に、その成果をDebianエコシステムにも反映させるという強力な戦略を築き上げようとしています。Debian市民はeLxrのイノベーションと改善のためにもアップストリーム貢献することになるため、eLxrコミュニティの開発活動に積極的に参加していくことになります。このアプローチは、eLxrのディストリビューションそのものを強化するだけでなく、Debianの機能セットを拡張し全体的な品質を向上させますのでDebianの強化にもつながることになります。

eLxrは、Debianの開発ライフサイクルの様々な段階でテクノロジーをリリースできる点、そしてDebianではまだ利用できない革新的な新しいコンテンツを導入できるという点で、そのアジリティと新たなニーズへの対応のスピードが特徴になります。さらに、長期にわたってeLxrメンバーのコントリビューションにアクセスし続け、幅広いDebianコミュニティにとって有益であり続けられるよう、持続可能性にコミットしています。

エッジでのインテリジェントデプロイのための統合されたアプローチ

今日のテクノロジーには、アジリティと急速に変化する要件や運用上の問題への対応の速さが求められます。eLxr Projectは、オープンソースコミュニティとテック企業から生まれた最先端のテクノロジーをeLxrディストリビューションに統合することにより、まだ広く普及していないイノベーションやその他のチャンネル経由では簡単にアクセスできないイノベーションをユーザーがいち早く利用できるようにします。

過去10年以上、Yocto ProjectBuildrootのような「build from sourceソースからビルドする)」ソリューションは、インテリジェントエッジでさまざまなユースケースを実現するために支持されてきました。組込みLinuxデバイスをビルドする従来の手法は、広範なカスタマイゼーションが可能であり、クロス開発用のツールチェーンが含まれるソフトウェア開発キット(SDK)を生成することができるため、開発者は、より強力なマシンにビルド作業をオフロードし、リソースに制約のあるデバイスのパフォーマンスを最大化することができます。

しかし、OTA(Over The Air)アップデートのほか、データアグリゲーションやエッジプロセッシング、予知保全、さまざまな機械学習機能といった新しいパラダイムなど、エッジデプロイにおける接続性の要求が増加していることから、ニアエッジデバイスとサーバーの両方に対して異なるアーキテクチャアプローチが求められるようになりました。この結果、複数のディストリビューションやヘテロジニアスな運用環境が生まれ、複雑性とコストが増大しています。このように複雑性が増すと、共通脆弱性識別子(CVE)やバグの監視の必要性、追加SBOMの使用、さまざまな更新頻度など、他にも多くの問題が生じ、負担も大きくなります。

これらの問題に対応し、より均質なソリューションを提供するために、Debian派生のeLxrが誕生しました。eLxrは、従来のインストーラーと新たなディストリビューション・ツー・オーダー(distro-to-order)ツールセットを組み合わせ、単一のディストリビューションでエッジとサーバーのデプロイをより適切に処理できるようにする一方、モダンなツールを使用してメンテナンスを容易にします。統合された技術スタックと組み合わせることにより、エッジデプロイの最適化、デバイス間でのシームレスな運用環境の構築、エッジからクラウドまでのデプロイにおける将来のイノベーションの基盤の構築を目指す企業に戦略的な優位性を提供します。「既存のエンタープライズ ソリューションは、ユーザーが迅速にイノベーションを起こし、新しいテクノロジーを迅速に採用するために必要な速度よりも遅いペースで進んでいます。

革新的なソリューションを開発しながらも、それを広く配布する手段を持たないオープンソース コミュニティやテクノロジー企業の配布パートナーとして、eLxr Projectは重要なテクノロジー配信のギャップを埋めています 。

なぜDebianなのか?

eLxr ProjectDebianを採用する理由は主に2つあります。Debianは30年以上にわたってオープンソースのゆるぎのない理念を持っていること、そして、派生ディストリビューションに寛容であることです。

Debian は、eLxr などの新しいディストリビューションや派生版の作成を奨励​​しています。これにより、さまざまなユースケースへの適用範囲が広がります。 Debianは、コミュニティの拡大に寄与する派生版での経験の共有こそが、、既存ユーザー向けのコードを改善し、Debianをさらに広範囲のユーザーに適したディストリビューションに高めるための手段であると考えています。

eLxrに参加しましょう

ウインドリバーは、保証されたオープンソースディストリビューションで新しいすぐに使えるテクノロジーをタイムリーに配布および提供することを目標に掲げるコミュニティを育成する取り組みの第一歩として、初期のeLxrリリースに貢献しました。

eLxr プロジェクトでは、こうしたコミュニティ育成へ取り組みにより、参加を希望するすべての人にとってアクセシビリティと柔軟性が促進され、新しいテクノロジーの完成とディストリビューションによる配信の間のギャップを埋めたり、すでに埋められているギャップを活用できたりするようになると考えています。

eLxrを利用する、eLxrに貢献する、いずれに関わらず、eLxrに関わってくださる皆様はeLxr Projectの一員であり、参加を歓迎します。新しいテクノロジーを開発中であれば、そのテクノロジーを検証し、統合してイノベーションを推進しましょう。eLxrの利用を予定しているなら、皆様の体験、ユースケース、解決した問題、今後の改善方法をコミュニティの他のメンバーに伝えてみませんか。私たちは皆様の貢献を心待ちにしています。


eLxrの詳細情報や、eLxrリポジトリ、ダウンロード、ドキュメント情報の入手については、eLxrのWebサイトelxr.org)にアクセスください。


2024728日~84日に韓国の釜山で開催されるDebConf2024916日~918日にオーストリアのウィーンで開催されるOpen Source Summit Europe20241028日~1029日に東京で開催されるOpen Source Summit Japanで、eLxrのコミュニティリーダーがお待ちしていますので、イベントにぜひご参加ください。