高度なセンサー技術、より強力なコンピューティング能力、エッジプロセッシングによって、ロボットにAI機能を持たせることができるようになりました。こうしたロボットの普及、付加価値、成長を促進するために、業界における複数の提言を単一のコンセプトに集約したモデル(3つの重要な側面における簡素化モデル)15をマッキンゼーが開発しました。
1. 適用のしやすさ
ロボット開発企業やシステムインテグレータの重要な仕事は、潜在的エンドユーザーが魅力的なユースケースを思い描きやすくすることです。この点における簡素化とは、イメージしたものと実際のインストールにおけるギャップを埋めるためのソフトウェアを用意し、エンドユーザーが最終的な投資判断を行う前に設計概念を実証できる場を設けるなど、ごく基本的なことかもしれません。これらを実践している代表例がABB Roboticsです。
ABB Roboticsの公式サイトでは、コボットアプリケーションを独自に構築するためのツールを提供しています。ユーザーは、直感的なメニューより、部品のハンドリング、ねじ締め、外観検査などのオプションを含む各種機能を閲覧でき、該当する機能がない場合は 「ご要望をお聞かせください」 というボタンも使用できます。ユーザーは、部品のピックアンドプレースの方法、ビジョンセンサーの取り付け位置、通信プロトコルの種類、設置場所(壁、台座への設置、天吊り方式)などを選択します。選択肢をイラストで分かりやすく説明しています。完了すると、プログラムはユーザーの選択を評価し、本格的に導入したコボットがどのように動作するのかをシミュレーションしたカスタマイズ動画を提供します。
2. 接続のしやすさ
マッキンゼーはロボットメーカーに対し、「相互運用性」という重要目標を達成できるセキュアで柔軟な接続性を備えたロボットの実現を推奨しています。ロボット同士のみならず、インテリジェントシステム、エッジ、クラウド、分析システム、その他の関連ツールやデバイスとも簡単に接続できる利便性が求められます。
コボットは、AIなどの複数のセンサーやツールを利用して、周囲の状況を感知し、安全に動作します。同時に、コボットが設置されている、もしくは動き回る現場自体にも、センサーを多用したインテリジェントデバイスが数多く存在します。問題は、IoTとロボット技術は通常、別々の領域として捉えられていることです。16 これにより、両者の融合によるシナジー効果が見過ごされてしまいます。しかしIoTと産業ロボット技術を新たな視点で再定義すると、Internet of Robotic Things(IoRT)の世界を実現できます
ロボット技術とIoTの発展はこれまで、それぞれ異なりつつも相関性の高い目的に牽引されてきました。IoTでは広範囲のセンシング、監視、追跡を支援するサービスがメインですが、ロボット技術の分野では生産、アクション、相互作用、自律的な挙動が主要テーマになっています。両者の融合でデジタル化の規模が拡大すると、インテリジェントセンサーやデータ分析ツールが高精度な状況認識情報をロボットに転送できます。分析や判断の材料となるデータが増えるため、ロボット自身の作業遂行能力も改善します。さらにエッジコンピューティングにより、マシン同士の協働や、人間とマシンの協働作業をさらに緊密化できる世界が到来しました。17
3. 運用のしやすさ
ロボットがますます高知能化し、能力や柔軟性が高まるにつれ、エンドユーザーによるティーチング工数を削減できるという逆説的な現象も起こります。 産業ロボットの訴求力を高めるためには学習サイクルの短縮が重要であることを大手メーカーは理解しています。
「FANUC社では、より幅広い業界でオートメーションを推進できるよう、ティーチングしやすいロボットの実用化を目指していました」と話すのは、TechCrunchのキャサリン・シュー記者です。18同社はAIやAI関連技術を活用し、教育/学習プロセスの短縮を図っています。またLocus Robotics社でも、簡単にトレーニングでき、わずか4週間で現場に配備可能な物流倉庫向けロボットを拡販しています。ラーニング支援インタフェースやツールも、より単純明快かつエンドユーザーの効率化につながるデザインになっています。こうした操作性の改善は、ロボット業界全体が取り組んでいる大きなテーマです。