組込みLinux製品の開発における課題
組込み製品にLinuxを採用した事例が数多く紹介される一方、その製品開発は、オープンソースがゆえに直面する問題も少なくありません。サポートがうまくえられず開発工数の見通しが立たない、自社のボードに対応したLinuxディストリビューションを入手できない、リリースサイクルの早いLinuxを使った製品を長期間運用・メンテナンスすることが難しいと感じる、GPLやLGPLといったソースコードの開示義務が生じるライセンスを含めたシステムの中で自社技術の漏洩を防止する方法がわからない、ライセンス違反がないかなどを確認する方法がわからないなど、様々な課題があります。以下に、組込みLinux製品を取り巻く課題を製品ライフサイクルのフェーズごとにご紹介します。
製品企画フェーズにおける課題
- Linuxに詳しい人的リソースの確保
- 組込みLinuxの開発実績がある企業との連携
- 製品に最適なLinuxディストリビューションの選択
- 組込みLinuxの開発工数見積もり
- 最適なスケジュールと開発プロセスの立案
- 品質保証と認証取得
- オープンソース・コンプライアンスの管理
- 組込みLinux製品に適したアーキテクチャの検討
組込みLinuxを採用することにより
セキュアなネットワークプロトコル接続や
リッチなGUIを備えた製品を作ることができます
設計・開発フェーズにおける課題
- Linux/OSS関連の技術情報の獲得、社内エンジニアのスキル向上
- 新規開発項目への対応
- CPUに対応したBSP(ボードサポートパッケージ)の入手
- 既存のアプリケーションのポーティング
- 既存のLinux開発資産の再利用
- ミドルウェアやカーネルの開発
- 処理性能と起動時間の最適化
- 開発コストの削減
組込みLinuxにはエンタープライズLinuxにはない
開発ボードへのポーティングや性能の最適化
といった課題があります
テストフェーズにおける課題
- テストエンジニアの確保
- Linuxのテスト経験不足
- 統合したOSSの品質が低い場合の対策
- 品質担保に必要なクライテリアの定義
- テスト工数の削減と効率化
- ベンチマーク、機能、パフォーマンスのテスト
- テスト結果のドキュメント化
誰もが常に変更できるOSSの検証には
テストのノウハウが不可欠です
運用・保守フェーズにおける課題
- 保守担当エンジニアの確保
- 障害を解析するエンジニアの人的リソースと工数の確保
- セキュリティホール・不具合への対応
- ソフトウェアのアップデート方法の確立
- 運用・保守費用の削減
- 継続的なオープンソース・コンプライアンスの管理
Wind River Linuxなら15年以上運用されるシステムにも
安心して採用できます
組込みLinuxで課題をお持ちのお客様は、ぜひウインドリバーまでご相談ください。
組込みLinux製品開発に関するお問い合わせ組込みLinux製品の開発におけるリスク
組込みLinux製品を開発する際の課題をご紹介しましたが、もしこれらの課題をひとつでも見落としたり、課題に対して誤った決断を下してしまうと、組込みLinuxに潜むリスクが顕在化します。組込みLinux全体のリスクを以下に示します。組込みLinux製品の開発においては、こうした様々なリスクを回避しつつ、開発を効率的に推進し、コストを抑えながらイノベーティブな機能を実現するというチャレンジが求められます。
組込みLinux製品の製品企画から、出荷後の運用・保守までに潜むリスク
組込みLinux製品の課題を解決するWind River Linux
Wind River Linuxとは
Wind River® Linuxは商用組込みLinux製品として、オープンソースから自社でLinuxプラットフォームを構築する際のリスクや労力を回避し、最新コードベースの確保と不具合の追跡・修正などのサービスにより堅牢で信頼性とセキュリティに優れたLinuxベースのエッジデバイスを実現できる製品です。こうした魅力から、Wind River Linuxは、商用組込みLinuxマーケットシェアNo.1!※の業界最先端の組込みLinux開発プラットフォームとして多くの製品に活用されています。Wind River Linuxを使うことにより、組込みLinuxの開発における主要な課題の解決やIPコンプライアンスや輸出コンプライアンスの管理をウインドリバーのサポートに一任できるため、お客様は最終製品によるイノベーションの実現に注力ができ、市場投入までの期間を短縮することが可能です。
※出典:VDC Research The Global Market for IoT & Embedded Operating Systems (2018)
さらに、Wind River Linuxは製品ライフサイクルが長期にわたる組込みシステムで課題となるセキュリティパッチの作成や不具合対策に標準5年、オプションにより15年といった長期のサポートを提供しており、総所有コスト(TCO)の削減も期待できます。
なお、Wind River LinuxはマーケットグレードLinuxとして、航空宇宙・防衛システム、産業機器、医療機器、自動車、通信など、品質への妥協が許されない分野において多数の採用実績があります。
Wind River Linuxの詳細Wind River Linuxを評価(ビルドシステム含む)
Wind River Linuxで技術面、品質面の課題を解決
まず、技術面と品質面の課題は、Wind River Linuxが有する品質の高さにより解決可能です。Wind River Linuxの開発とメンテナンスのプロセスは、ISO 9001:2015品質マネジメントシステム規格認証を取得しています。厳密なエンジニアリングプロセスを順守して開発されており、定期的に品質監査を行っています(認証対象:Wind River Linuxにパッケージ化されるオープンソーステクノロジーの設計、開発、インテグレーション、検証、規格認証、メンテナンス)。
さらに、Wind River Linuxの開発とバリデーションはCI/CDプロセスで行われ、自動化されており、毎日3000種類のビルドを実行し、お客様へ提供するソフトウェアの品質を担保しています。そのため、Wind River Linuxの年間サブスクリプションをご契約いただくだけで、高品質なソフトウェアやライブラリをはじめ、十分に検証された幅広いボードに対応するBSP を入手することができます。
プロフェッショナルサービス(受託開発)の活用で人的リソースの不足やスケジュール上の課題を解決
いざ、組込みLinux製品の開発をはじてみるとオープンソースソフトウェアの開発の経験不足やLinuxに精通したエンジニアの不在などの理由から、予定していたコストやスケジュールを達成できないことがよくあります。組込みLinux製品の開発はアプリケーションの開発だけでなく、アプリケーションが利用するサービスやライブラリの選定と統合をはじめ、デバイスドライバの実装やポーティング、既存の開発資産のポーティング、BSP(ボードサポートパッケージ)の動作検証といった、Linuxに関する様々な知見と経験を必要とするためです。
また製品出荷後にも課題はあります。最新のLinux環境で脆弱性や不具合が発見された場合、こうした脆弱性がお客様の製品に影響するかの判断や、お客様製品に含まれている過去のLinuxのソースコード向けに修正パッチをバックポートするにもLinuxの知識が不可欠です。
これらの課題に対して、お客様がイノベーティブなアプリケーション開発に注力していただけるよう、ウインドリバーは受託開発サービスとして、組込みLinux製品に必要な開発を支援するサービスを提供しています。Linuxに含まれているパッケージのサポートはもとより、お客様自身で統合されたソフトウェアパッケージやアプリケーションの開発支援や長期間にわたるメンテナンスを支援します。ウインドリバーは、航空宇宙・防衛、産業機器、医療機器、自動車、通信など、幅広い業界で多くの受託開発の実績があります。
マネージドサービスによりOSSライセンス・コンプライアンスを管理し知財の漏洩を防ぐ
オープンソースを扱う際には、オープンソース・コンプライアンスを意識し、管理する必要があります。しかし、現在のLinuxには100種類以上のOSSライセンスが混在しており、その中にはGPLやLGPLといったソースコードの公開義務が課せられるライセンスもあります。そのため、オープンソース・コンプライアンスの管理に誤りがあると、自社の知財が流出する恐れがあります。一方で、組込みLinux製品開発全体にわたり、コンプライアンスを手作業で管理することは非常に困難です。
そこで、ウインドリバーでは、Wind River® Studio Linux Servicesを通じて、コードレススキャンによりプラットフォームで使用されているライセンスを特定できる「Security and Compliance Scanning」サービスや、 コードスキャンによりLinux プラットフォームのソースコードで使用されているライセンスを特定できる「Security and Compliance Analysis and Remediation」サービスを提供しています。サービスの詳細は以下の「Wind River Studio Linux Servicesについて」をご覧ください。
また、お客様が実現する最終製品に最適な開発プロセスの立案や、組込みLinuxアーキテクチャの設計、お客様が既に持っている開発資産の移行を支援するコンサルティングサービスも提供しています。
以下にウインドリバーのコンサルティングサービスをご活用いただくことによって解決できる課題の一例をご紹介します。
- 開発プロセスの見直し
- 組込みLinuxアーキテクチャの設計
- Yoctoプロジェクト互換のBSPの作成
- Yoctoプロジェクト互換性のあるミドルウェアとカーネル開発
- 自社開発Linuxやハードウェアベンダーが提供するLinuxからYoctoプロジェクトと互換性のあるディストリビューションへ移行
- オープンソースとウインドリバーのハイパーバイザーベースの仮想化を使用した組込みマルチコアLinuxデザインへの移行
- ベンチマーク、機能、パフォーマンスのテストとテスト結果の文章化
- 障害解析
商用組込みLinuxをトータルに活用して総所有コスト(TCO)を削減
以上のように、組込みLinux製品の実現には多くのリスクを回避し、多くの課題を解決する必要があります。ここまでに紹介したWind River Linuxの提供する包括的なサービスをご活用いただくことにより、ソフトウェアの開発費用・開発期間・外注費用を最適化し、お客様のコストを最小限に保ちながら、高品質でインテリジェントなエッジデバイスをリリースすることができます。
そして、リリースした製品の保守もウインドリバーへ一任できるため、現行製品の運用のコスト削減のみならず、保守担当のエンジニアを次期製品に搭載するイノベーティブなアプリケーションの開発にアサインすることができます。ぜひ、お客様製品の総所有コスト(TCO)の削減にWind River Linuxおよび各種サービスをご活用ください。
さらに高度な製品を実現できるマルチOSをサポートするには
ウインドリバーの提供するWind River® Helix™ Virtualization Platformは、マルチOSで重要度が異なるアプリケーションが混在する環境を、単一エッジのコンピューティング・ソフトウェア・プラットフォームに統合し、航空宇宙・防衛、工業、医療、自動車などの市場において重要なインフラストラクチャソリューションの管理を容易にし、高いセキュリティや安全性を実現することができます。Wind River Helix Virtualization Platformをご活用いただくことで、単一のエッジの上にLinuxはもちろん、RTOSやWindows、Androidなど、他のOSを共存させることが可能です。
また、マルチOSによりレガシーアプリケーションをサポートしつつ、インテリジェンスも兼ね備えるアーキテクチャを実現することができます。長年稼働し続けている専用ソフトウェアを使用しながら、最新のソフトウェアやクラウドネイティブの技術を製品に統合可能です。詳細はHelix Virtualization PlatformのWEBページをご覧ください。
マルチOS対応を実現できるWind River Helix Virtualization Platform